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会員 池田さん からの寄稿:

Roussillon en Provence

2007年5月、南フランスを旅行した際、プロバンス地方の ルシヨン村に立ち寄りました。この村は、天然顔料 オークルOcre の産地として、知る人ぞ知る場所です。この村の建物はほとんど全て落ち着いた赤色や黄土色です。
ルシヨン村の壁 (F10号)
ルシヨン村の門 (F10号)
オークルは水酸化鉄を含む粘土ですが、赤から黄色、淡い白までいろんな色がありました。これを使って絵を描いてみたくなり、小瓶8色セットを買ってきました。 天然の粘土なので、マチエールが「土ぽっく」なると想像しこの粉をペインティングオイルで溶いてみました。ところが粉は完全に溶解してしまい、特段のマチエールは現れませんでした。
 それでは少しつまらないので画材店で微細な白砂を買ってきて、これと混ぜて塗った場所もあります。オークルは従来の油絵具にもすんなりと混ざりました。説明書によれば水彩にも油彩にも使えるとのこと。
 改めてネットでOcreを調べて見ると「プロバンスの色」と出ています。化学的顔料が発明されるまで、欧州ではこのような天然の材料が絵画だけでなく、建物、焼物、化粧品。そしてなんと食品にまで使っていたとのことです。驚きです。
 Ocreの産出した谷間に行く道は、村はずれにある高い丘の脇にOcre谷に行く入り口がありました。階段を下りていくと、赤い土の広場に出ました。風が吹くと赤い土ぼこりが一面に舞い上がりました。200メートルほど進むと、削りとられて残ったのでしょう、数十メートルの高さがある円錐形の赤い岩がありました。
 赤い谷間から戻ってくると、髪の毛と服は粘土の粉で赤くなってしまいました。この場所の「オークル」はもう採りつくしたようでした。
池田佳和 2007年11月
「ぐるーぷ・いまーじゅ展」出展作品