季節の風景:深まりゆく秋

秋は、“物思ふ”とか、“深まる”という言葉がよく似合う季節。
燃え上がるような美しい紅葉に対峙すると、心の中の小さなわだかまりなど取るに足らないものと思えてきて、荘厳な自然に対する慎ましい感謝の念で満たされる。比叡山の最も奥まった秘境、横川では、紅葉がもうこんなに色づいているとの便りが届いた。紅葉は山を下るというので、京都の平地も間もなく錦繍の糸で染められていくことだろう。
( 写真提供:池田佳和さん  文章:大谷恭子)

わが触れて来し山の樹や秋深し  中村汀女