Sugar & Salt Corner
No.24     2005年2月22日
佐藤 敏雄 

いじわる爺さんの法則

(1) ぐうたら男の法則バリエーション
ぐうたら男の法則が本当に当たるのかどうかで、20数年前、BBCで大論争が行われたようです。例えば次のような 12の例が挙げられています。これを見ると、どうやらこの法則は 「意地悪爺 (婆) さんの法則」 と呼んだ方がいいようです。 あいまいな認識に関する12の法則
1.Sod の法則は、時に Murphy の法則と呼ばれる。
「本来まずい事は、必ず、しかも最悪のときに起こる」
2.O氏のマーフィーの法則に関するコメント
「マーフィーは楽観主義者である」
3.口に出すべからざる法則
「口にした途端、もしいい事であればどこかに消えてしまい、悪い事であれば、すぐに発生する」
4.期待に関する非可逆的法則
「否定的な期待は否定的な結果になる。肯定的な期待も否定的な結果となる」
5.H氏の法則
「すべての人間は、うまく行かないシステムを内包している」
6.Z氏の遷移システム力学第一法則
「ひとたび毛虫の缶詰を開けたら、もう一度戻す最良の方法は、大きな缶を使うこと」
7.S氏の定数
「答えXを掛けて、あるいはXで割って、あるいはXを足して、またはXを差し引いて得られる数値Xを求めるにはXを知らなければならない」
8.選択性重力の法則
「物体は最悪の被害を与えるべく落下する」
9.J氏の同義語
「バターを塗ったトーストを落としたとき、バターの側が下になって落ちる確率は、カーペットの値段に正比例する」
10.B氏の分類
「2種類の人間がある。すなわち、人を2種類に分ける人と、分けない人」
11. プロジェクトに関する90・90の法則
「仕事の最初の90%には90%の時間を要し、最後の10%は更に90%を必要とする」
12.F氏の規則
「必要は変テコな仲間の母である」

(2) マーフィーの法則を評価する数式
英国のB社が、各種専門家を集めて、マーフィーの法則に基づくリスクを算出する次のような数式を導き出しました。
[ (U+C+I) * (10-S) * A ] / [ (1‐sin(F / 10)) * 20 ]
ただし、
U:Urgency  (緊急度)
C: Complexity  (複雑さ)
I: Importance  (重要度)
S: Skill  (熟練度)
F: Frequency  (頻度)
A: Aggravation  (悪化度)=0.7
各変数には1から9の数字を入れます。10に近いほどリスクが高いそうです。Aの意味がよく分かりませんが 、悪くなる傾向とでも言うものでしょうか、専門家達が相談してこの値は0.7と決めたそうです。

さて、この式が役に立つのかどうか。チャレンジするのが老エンジニアの特質であります。これを検証するため、 両極端の場合について試してみましょう。
最悪の場合: U、C、I いずれも大きいから、9とします。Sはシロートとして1、Fは始終使うほど危険度が 高いと考え、9とすると、答えは56。
最良の場合: U、C、I いずれも小さいので、1とします。Sはプロ級で9、Fは滅多に使わなければ危険度は 低いと考え、1とすると、答えは0.16。

どうもこの式はおかしいようです。式の構成としては、緊急度、複雑さ、重要度などが高く、スキルが低ければ 大きい数値になるようにできていて結構なのですが、10に近いほどリスクが高いと言っているのですから、 最悪の場合10になるような式であるべきです。また正弦関数 SIN を導入していることの意味が分かりません。 更にスキルだけが掛け算になっていて、その重みが大きい理由も理解できにくい。加えてFすなわち、頻度については、 上の仮定が正しいかどうか。逆に始終使うほど、エラーを直しやすいから危険度は低く、滅多に使わなければ ヤバイので危険度が高くなるとも考えることができます。

以上のように疑問が沢山ある式ですが、どなたか新しい数式にチャレンジしてみませんか。 要はマーフィーの法則が存在することをよく認識し、失敗の原因である上記変数に対し、正しい対応をしなさい ということで、マーフィーさんは立派な指標となり得るのです。

(3) おまけ
数式で少々疲れましたので、最後にKさんから頂いた例をおまけとしてご紹介しましょう。
@ ドイツの高速、アウトバーンでのお話。狂人が一人逆走しているとの通報を受けた警察が、 走行中のすべての車に対し、無線で 「ただいま、狂人の乗った車が1台、アウトバーンを逆走しています。 皆さん注意を!」 との警報を発しました。それを聴いた当の狂人は、「ヘンだなあ、警察は狂人の車が 1台といっているが、これまでにオレは何台もの狂人の車とすれ違っている .... 。」
A 「敗者」 とは、何ヶ月もかけて脱出用の穴を掘り、何ヶ月も隠れていかだを作ってようやくマイアミに到着し、 ニューヨークを目指してやっと飛行機に乗ったとたんハイジャッくに遭い、キューバに向かうことになった 「キューバの囚人」

マーフイーも少し狂ってきたか?このへんでお開きといたします。
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