ネットインタビュー (11)

--- 25年振りのバスク地方を歩く ---

 今回は 『25年振りのバスク地方へ センチメンタル ジャーニー』 を敢行された 柴田清栄 さんに登場していただきました。柴田さんと言えば現役時代はマドリッド事務所駐在後アネックスビル1階でスペイン料理のお店 「エル・ムンド」 の経営も手がけられ、近辺のサラリーマンが仕事帰りにちょっと立ち寄ることを楽しみにした場所の創設というユニークな業績をあげられました。スペインの食の文化が身体にピッタリとフィット。
 それでは、旅行のお話しを伺って参りましょう。(インタビューの終わりにバスクの説明を付しました 文責 鎌田光恵)

Q1. 25年振りのバスク地方は期待通りでしたか?

旅で訪れた場所の地図

 そうですね。期待以上のものがあったと思います。新発見も沢山ありました。スペインバスクのほかにフランスバスクがあり、そこに住んでいるバスクの人々が、たとえ国が違っても同じような伝統、文化を継承しているのが実感できました。 自然も豊かで、海岸沿いに緑の牧草地が広がり、羊や牛が放牧されています。その風景が延々と続き、美しい景色も見飽きるほどでした。マドリード近くの荒涼とした赤茶けた大地とくらべて、とても同じスペインとは思われませんでした。
サンセバスティアンのラ・コンチャ湾  それから食べ物でも、ステーキ、仔羊の網焼き、生牡蠣、茸の炒めものなどが、レストランでの代表的料理で、煮込み料理が少ないのが気に入りました。素材の味を生かした調理法が好きな人達だと思います。日本で有名なバスク人はフランシスコ・ザビエル。それからベレー帽もバスクのものですね。(サンセバスティアンのラ・コンチャ湾)

Q2. 25年間温め続けてこられた旅の誘いの原動力は?

 美味しいビフテキ?(笑) 。25年前にスペイン北部の都市、サンセバスティアンで、美味しいビフテキの店を見つけ、3日間に2回も食べに行きました。キロ単位でオーダーする店で、駐在していた頃、家族3人で最初は1キロ、2回目は2キロ食べたことがあります。このレストランに機会があればもう一度行ってみたいと思っていました。今回、このレストランを再び訪ね、二人で1キロのビフテキを食べました。我々が25年振りに訪ねて来たことを知った老料理人の一人が、帰り際に向こうから握手を求めてきました。多分、彼は25年前からここで肉を焼いているのでしょう。彼も嬉しかったのだと思います。
サンテジャーナ・デル・マールの古い家  それから、長崎カステラの発祥の地?と思われる中世からの古い町、サンテジャーナ・デル・マール。ここももう一度行ってみたい所でした。25年前は、軒先でカステラ一切れと牛乳を立ち食いで食べられました。今は包装紙に包んで売っているだけです。
(サンテジャーナ・デル・マールの古い家)

Q3. 近年スペイン北部のバスク地方がスペインからの独立運動を起こしている?

 独立を目指すETAという過激グループが、独立反対派に対するテロを繰り返していました。バスク地方は 「バスク国」 と名乗ることも許され、自治権も拡大されているのに、残念なことです。しかし、最近の情報ではETAのテロも少し沈静化しているそうです。スペインにはバルセロナを中心とする、カタルーニャ地方の独立、自治権拡大などの動きもあり、スペイン分裂につながるこのような動きはスペインの大きな問題です。

Q4. 旅の前半はフランス、ボルドー訪問という異質な?組み合わせがありましたね

ビアリッツのレストランの壁絵

 6年前にワインの名産地ブルゴーニュ地方を2週間掛けて回りました。今度もボルドーを中心としたワイナリー巡りを考えていたのですが、地図を眺めているうちに、考えが変わってきて、割りと近いスペインの北部地方にも足を伸ばすことにしました。(ビアリッツのレストランの壁絵(バスクの漁師だと思います。黒いベレー帽が特徴的です))
 ところが、実際レンタカーを借りて走ってみると、結構遠くて9日間で1400キロのドライブを余儀なくされました。このドライブの途中に、サンセバスティアンやビアリッツなど、バスクの代表的な町があり、期せずして 「バスク国」 を旅行したことになった訳です。

Q5. 滞在ホテルは日本からインターネットで予約して出発なさった
    そうですが ---

 インターネット予約は、とても便利で安心できるシステムだと思います。ただ、初めて行くホテルなので、多少の当たり外れはあります。私の場合は翌日の行動を考えて、なにかと便利な市の中心部のホテルを選びました。思ったより狭いところもありましたが我慢できました。1回だけ、ちょっと安すぎるかなと思ったところは矢張り設備が悪く、失敗でした。ある程度のレベルは必要だと思います。
 それから大チョンボもありました。現地のホテルから翌日のホテルをインターネット予約したときのこと。プリンタの故障で予約確認のコピーがとれず、ホテル名だけメモしていきました。ところがホテル名 Santemar を Santander とメモしたため、ホテルが見つからず、探しあぐねて、郊外の寂しいところに泊まる羽目になりました。せめて電話番号くらいはメモすべきでした。

Q6. 柴田流 「ワイン」 の選び方、飲み方について蘊蓄 (うんちく) をどうぞ!

 残念ながら薀蓄はありません。常識の範囲で飲んでいます(笑) 。 ただ、お気に入りのワインとして、スペイン、リオハの赤、バンダアスールがあり、常時買い置きしてあります。これは何時飲んでも美味しいので、幸せなことだと思っています。今回の旅行中、歩き疲れたあとの、冷えた白ワインが美味しくて、毎日それを飲んでいたところ、すっかり白ワインが好きになりました。それで最近いろいろ白ワインを買って楽しんでいます。何歳になっても嗜好が変わることがあるのですね。

Q7. 旅の思い出を小冊子にまとめられましたが旅行中は日記を書いておられたのですか?

 そうですね。旅行中は毎日メモをつけています。日本に帰ってから、旅行案内書、領収書などをみながら、PCで整理し、写真を入れ、日記風にまとめます。これも旅の楽しみの一つです。メモをつけるのは毎日、朝食前か後で、何故か30分くらい暇な時間が出来ます。そのときに、前日の行動とか感じたことをメモして置きます。

Q8. 柴田さんのもう一つの顔は 「タイ語」 研究者そのきっかけと成果は?

タイ ホアヒンのゴルフ場

 7年ほど前から、冬の2ヶ月間、タイに長期滞在をするようになりました。(タイ ホアヒンのゴルフ場)せめて片言くらい話したいと思い、タイ語の勉強を始めました。始めてみるとタイ語はとても不思議?で面白い言葉でした。
 例えば動詞。人称、時制などによる変化一切無し。これは楽チンと思いましたが、代わりにあるのは、5つの声調とタイ文字。これは難しい。

柴田さん

?????????? (タイ文字) サワディクラップ こんにちは

 習い始めて6年。年齢による記憶力低下もあり、成果はあまり上がっていませんが、飽きないのでよい暇つぶしになるし、ボケ防止に役立っていると信じています。

おことわり
 原文のタイ文字を生かす「unicode」を使うと、Firefox、Netscape などでは画面が乱れてしまいますので、一般的な文字コード「ANSI」を使いました。

(あとがき)
 今は昔、ある時KEC主催の教養講座で、金田一春彦氏の 「バスク語」 講話がありました。 「帽子をかぶった女の子」 という単語をホワイトボードの端から端まで一気にかかれたことを今も鮮明に覚えています。バスク語は非常に難しく、 「神の仕置きに --- 汝、バスク語を習得せよ ---」 という一文があるとも話されました。そのバスクを2度も訪ねられた柴田さん良かったですね。

<バスク Pais Vasco (西)、Pays Basque (仏) >
 イベリア半島北部、ピレネー山脈西部に位置し、ビスケー湾岸からカンタブリア山脈までスペインとフランス両国にまたがる7地方からなる地域。
 バスク地方にはスペイン側に約265万人、フランス側に約35万人が住んでいるが、今日では、このうちスペイン側の約60万人、フランス側の約4万人がバスク語を話せるに過ぎない。バスク語は5個の母音音素と20個の子音音素もつ独特な言語であるが系統は解明されていない。バスク人の起源については、イベリア系、カフカス系、ベルベル系など諸説があり、定説はないが、体型、古語などからみて、バスク人の一部はクロマニョン人の末裔であるとの説が提唱されている。
--- 平凡社、世界大百科事典 ---