ベトナム旅行記 5
ベトナム旅行 9月12日 クチトンネル
ベトナム戦争末期、もっとも激しいゲリラ戦のあった部落のクチを訪ねました。
ホーチミンから車で2時間、農村のぼコボコ路を走るあいだに農家の庭先に乾されたたくさんのスノコ、これはハルマキの皮でした。ガイドの説明では、主婦の仕事で、天気の良い日朝8時から夕方4時まで、米の粉を溶いた白い汁を特製の鍋でクレープを作る要領で伸ばしてスノコに並べて乾かすそうです。蒸すのに20秒、乾すのに2時間、1日800枚から1000枚作れるとのこと。
クチは枯葉剤のあとに生えてきたという潅木がひょろひょろとよわよわしく伸びているなかに,壕の入り口がかくされていました。30センチ四方ぐらいのちいさな穴は小柄な農民が両手を上にあげて肩をすぼめてやっと入れる大きさで草や枯れ葉で覆われておりよく見てもわかりません。一旦入ると細い通路は迷路のように広がって4層、やく35キロにわたっています。そのなかには会議室、作戦室、食堂、厨房、住居、それにお米を搗いたり製粉する設備もあり、さらに工作室では米軍の不発弾を拾ってきて分解し鉄片を伸ばしたりして新しく爆弾を作ったりしていました。
落とし穴は特に巧妙にできていて、一度落ちたら再び上がってこられない装置になっていました。このようなトンネルでクチの人たちは最後の最後まで抵抗して、米軍を撤退させた誇りがベトナム人ガイドの声高な口調に現れていましたし、一方アメリカ人ツアーの人たちが頷きながら神妙に説明を聴いている様子は平和な今なればこそのほほえましい情景でした。
帰りの農道では、1週間にいちどの制服登校日にあたり、女子高生が純白のアオザイをはためかせながら集団で自転車で走り去ったのは美しい風景で思わず見とれてしまいました。
ベトナム旅行最後の日、サイゴン川のほとりで夕景を眺めながら、偶然に訪れたこの国の、過去のながい苦しみ、美しい自然,、おいしい食べ物、豊富な資源、そしていま発展に向けて一生懸命に働いている人たちのことを思い、平和の願いを新たにしました。