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6−2 プランの再構築

(机上再旅行、承前)

天浜の終着「新所原」で降りると、次はまた歩かねばならない。一見詰らなそうな土地だが、右手の小山に注目しよう。高さこそ百メートルそこそこだが、突兀とした岩峰がひときわ目を引く。遠州・三河国境独特のこの岩場は、ロッククライミングの練習場にもなっているのだ。荒々しい岩肌を右手に眺めながらの歩行は小一時間ほどで終わりに近づく。左から新幹線の路盤が迫ってくる。その際に広い敷地を占めているのは神鋼電機の工場、その工場前から出る豊橋行きバスの客となれば、もう旅は終盤に入る。
豊橋からは真っ赤な塗装の名鉄特急が一気に名古屋へ運んでくれる。季節によっては、そろそろ日が暮れるだろう。地下の新名古屋駅から、しばし地上へ出てみよう。真新しい超高層のツインビルが夜目にもまばゆい。とかくドロ臭いといわれた名古屋のイメージは変わりつつあるようだ。
アンカーは近鉄である。これまで、田舎バスの乗り継ぎとテクテク歩きが続いた。ここからはガラリと気分を変えて、スマートな特急『アーバンライナー』の指定席でリラックスしよう。日は落ちて、もう窓外の景色は楽しめないが、好みのアルコール飲料に、それと若し友と道づれならば友との語らいに、車中の2時間はいつしか過ぎる。
ただしここでは、お酒はホドホドにして置こう。間もなく大阪は近鉄難波に着く。そこ、ミナミの繁華街で、旅・完結の乾杯が待っているのだから・・・。
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これで机上旅行も終わった。幕を引く段階である。だが、まだもう一つ気になることがある。実行可能を謳ったこの旅程にも致命的とも言える難点が一つだけある。新宿出発の時刻が早過ぎることである。首都圏の住居分布の実態と、朝の始発電車の時刻を勘案すれば『朝5時半に新宿』は不可能、という人も多い筈だ。さすれば二日間というのは、やはり無理なのだろうか。二日間の行程には一見余裕がありそうにも見えるが、各乗り継ぎ点におけるバスの乗り継ぎは全てきわどく、出発時刻を遅らせることは出来ないのである。
そこで、オプションとして『三日間メニュー』も用意しよう。これには、プラス1日の余裕時間をさし繰って、多少俗っぽくなるが観光的要素も加えてみよう。但し勿論『JR等忌避の基本原則』は厳正に遵守し、かつプランのコースを極度に逸脱しない範囲で・・・。たとえば、
------ 東京〜大阪 へそ曲がり 机上再再紀行 (3日間版) ------
朝 07:00の小田急ロマンスカー。箱根湯本から登山電車〜ケーブルカー〜ロープウエイ、さらには観光船までをも乗り継いで箱根町に至る。著名過ぎて新味に欠ける観光路線かもしれないが、これが大阪への旅の序曲だと思えば新たな感慨も湧こう。これでは余りにも道草が過ぎて邪道と感ずるなら、別案として箱根湯本から畑宿・旧街道経由のバスで一気に箱根町に直行し、そこでゆっくり温泉につかるという手もある。これなら時間はたっぷりで、存分にくつろげる。
ここから『へそ曲がり』プラン本来のコースに入る。夕方のバスで三島まで下って、初日はそこで泊まりとする。
2日目はやや強行軍で、プラン通りのコースを路線バス等で乗り継いで行く。薩捶峠のハイキングは昼ころ、天竜浜名湖鉄道で奥浜名湖にさしかかる頃には日が暮れる。そこで、三ヶ日またはその付近で途中下車し、湖畔に宿を取ろう。往年のKDD浜名湖荘は格好の宿だったのだが、残念ながら今はもう無い。けれどこの地域には瀟洒なプチホテルが幾つかある。ただしタクシーの使用はご法度だから、駅から歩ける範囲で選ばねばならない。
最終日は多少のゆとり時間がある。朝は湖畔をゆっくり散策してから天浜線の続きに乗ろう。新所原から3キロの歩きは変えようもないが、そのあとの名鉄、近鉄はお好みの列車を選べる。途中下車も自在。道草もJRとタクシーだけを避ければ自由としよう。近鉄大阪線の沿線、伊賀、名張など、首都圏在住者には馴染みの薄い地に歩を印してみるのも面白いかもしれない。
大阪へは特急の最終便までに着けばよいのだから、もう急ぐことはない。
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何となくふやけて、へそ曲がりの張りがなくなってしまったが、これは三日間なら時間に余裕があるということを示すためのデモンストレーションで、戯言(ざれごと)である。戯言のオチがついたところで『総括』のすべてを終わる。
第6章終り、 次回完結へ


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