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水泳に魅せられて
水泳に魅せられて
吉永小百合 (女優)、羽生善治 (棋士)、中曽根公康 (政治家)、橋田壽賀子 (作家)、中尾ミエ (歌手)、この人たちの共通点をご存知でしょうか?意外ではないでしょうか、皆さん水泳の愛好家です。水泳は、美容、健康に良いのは言うまでもありませんが、精神的なリフレッシュにも効果があります。先日の北京オリンピックでは、メダリストの北島康介、松田丈志、中村礼子等の活躍が話題になりましたが、最近の日経新聞 (H20.8.23) のアンケート「子供に習わせたい五輪競技」によれば、水泳が断トツの1位の人気で、2位以下のサッカー、野球、テニスを大きく引き離しています。水泳は子供のみならず、幅広い年齢層の間で人気があります。下図は、日本マスターズ水泳協会の5歳区分ごとの登録会員数を示していますが、20歳代から75歳あたりまで広く皆さんに愛されていることが分かります。水泳が、生涯スポーツとして最も適していると言われる所以で、このように広い年齢層の間で親しまれているスポーツは他にありません。
私は、健康維持と腰痛対策が目的で、10数年前からスイミング・スクールに通い始めました。もともと金槌ではなかったのですが、水泳を習うのは初めてで、実力は中級の「下」といったレベルでした。私のクラスは現在生徒数が約30名で、男女ほぼ半々、年齢構成は私が平均より若干上といったところです。驚くことに、皆さんスクール通いが長続きしていることです。3人がスクールオープン以来20年間通い続けています。私の子供時代は、水泳教室などといったものはなく、見よう見まねの我流で水泳を覚えたものですが、その泳ぎ方も時代の流れとともに進化してきています。最近話題になった水着の技術進歩は言うに及びませんが・・。最も極端なのが平泳ぎで、北島康介の泳ぎを見て分かるように、昔の平面的なカエル泳ぎから、上下運動を取り入れた立体的な泳法に進化してきています。もっとも簡単に見える平泳ぎが、実は最もデリケートで難しい泳法と言われています。
クラスに通い始めて数年経ったころに、マスターズ水泳会員の登録を行いましたが、これが切っ掛けになって徐々に水泳大会なるものに参加するようになりました。最初は、スイミング・スクールのイベントに参加する程度でしたが、翌年には川崎市の大会に出ました。ここで、アトランタ、シドニー、アテネのパラリンピックで計15個の金メダルを獲得した半身不随の成田真由美さんの泳ぎを 見て大いに奮い立たせられるものを感じました。その後、県レベルの大会に参加し、3年前には国内で最大のジャパン・マスターズに出ました。そして今年の4月、ついにオーストラリアのパースで開催された国際水泳連盟 (FINA) 主催の世界マスターズ水泳選手権大会に夫婦で参加しました。3月末に退職しましたので、世界大会への参加が定年退職記念旅行となったわけです。
パースはオーストラリア大陸の西の端、インド洋に面し、地中海性気候の世界で最も美しく、最も暮らしやすい街といわれています。美しい砂丘海岸を持ち、サーフボードやパラセイリングのメッカでもあります。大会は、4月18日から25日の間、パース郊外のチャレンジ・スタジアムで行われ、74カ国、5,061名のマスターズ・スイマーが集い、競泳、シンクロ、オープンウォーター、飛込み、水球の各競技が行われました。参加者の中には、嘗てのオリンピック選手、メダリストも数多く含まれていました。日本からは410名が出場し、参加数は開催国のオーストラリアについて2番目でした。また、日本から競泳に参加した94歳の女性が全競技を通しての最高年齢でした。競泳では、日本が3つの世界記録を樹立、シンクロ競技を含めると9種目でメダルを獲得し、ジャパンパワーを弥が上にも見せつけた大会となりました。
私は100m平泳ぎと200m個人メドレーに参加しました。初めての世界マスターズで、平泳ぎでは自己記録を更新しましたが、個人メドレーは残念ながら規定タイム内で泳ぐことができませんでした。一方、カミさんは2年前のサンフランシスコ大会に続いての2度目の世界大会で、800m自由型、200m背泳ぎ、400mと200mの個人メドレーの4種目を精力的にこなしました。
私どもの水泳のキャリアは10年程度で実力はまだまだです。体の方も年齢相応にガタがきており、世界大会のような大きな大会ではメダルを狙えるような実力はとてもありませんが、世界大会のお陰で、通常の観光旅行では得られない充実感、達成感を存分に味わうことができました。また、70代、80代の熟年の日本女性の活躍ぶりを目の当たりにして、夫婦共々大いに刺激を受けた次第です。
私共は、水泳のお陰で肉体的にも辛うじてメタボにもならず、それなりの体形を維持できていると思っています。また、水泳を通じて幅広い年齢層の方々との出会もあり、交流の世界が随分広がりました。 ゴルフやテニスと違って、水泳は一年中天候に左右されずに室内プールで楽しむことができますし、ゴルフのようにスランプに陥ることもなく、着実に上達します。また、自分のペースで練習ができるので怪我などのトラブルも少なく、陸上の運動と比べて短い時間で効果的に体が鍛えられます。さらに、道具は水着とゴーグル程度でお金もあまりかかりません。夏は水の中は極楽です。冬は温水プールの中で、寒さで縮こまった体を思う存分に伸ばしながら体の隅々の筋肉をほぐすことができます。プールから上がる頃には体は芯から温まり、心地よい疲労感とお風呂上りの爽快感とを同時に味わうことができます。
プールがなければ水泳はできませんが、水泳が子供達に人気があるせいか、探してみれば結構身近なところにあるようです。最近では、清掃工場で発生する余熱利用の温水プールも増えてきているようです。是非、一度探してみてはいかがでしょうか?
私の仲間には、70歳、80歳代のスイマーが大勢います。50歳、60歳代から始めた人も少なくありません。皆さん、今からでも遅くはありません。水中ウォーキングからでも始めてみませんか?きっと病みつきになりますよ・・・・。
稲垣 和則