季節の風景:銀座の柳

いま、銀座の並木道には、柳の新芽が透過光を受けて優しく揺らいでいる。この時期、「踏青」という美しい季語があるが、野山に出ずとも銀座をそぞろ歩きするだけで自然の息吹が伝わってくるのは、嬉しいことだ。明治時代、銀座には政府の方針で、柳、桜、楓、松などの木が植えられたそうだが、水分の多い土地のせいで、生命力の強い柳だけが残ったのだとか。西條八十は、“巴里のマロニエ銀座の柳”と歌っているが、その柳も昭和期にくらべると、かなり少なくなっているらしい。 ( 写真と文:大谷恭子)

風に会ひ風をまとへば柳の芽 稲畑汀子