季節の風景:チューリップ
16世紀のヨーロッパでは、チューリップの球根は投機の対象として高価で取引されたため、上流階級の間でのみ普及することになったという。司馬遼太郎の初期の短編『チューリップの城主』も、秀吉の兵糧攻めと戦い、篭城の末 城兵の命と引き換えに自害した播磨の若き城主・別所長治を題材にした16世紀の話。城主の亡骸に寄りそうように咲いていたというチューリップの描写が印象に残る。当時、この花は実際に城に咲いていたのだろうか、それとも著者の心に咲いた気高い花だったのか…
(写真と文章 大谷恭子)
校庭に人なき午後のチューリップ 塙 告冬