香港の大富豪Hutchison Whampoaが所有するHutchison(ハチソン)社が、W-CDMAのみを扱う新しい 携帯電話会社「3」(Three)を世界各国で立ち上げたが、サービスは悪戦苦闘の模様。ヨーロッパの GSM(2G)事業者は、財務問題に加え、3G/2Gネットワーク間ハンドオーバーに問題があるため W-CDMAの導入延期を続けているし、「3」の顧客はうまくつながらないため、買った電話機をショップに 返却していると言う。「3」が生き残るためには、いずれmmO2(元BT Cellnet)と合併せざるを得ない という見方まである。ヨーロッパから近着のデータを総合してみよう。
これまでのところ、事はうまく言っているようには見えない。3Gのハンドセットがビデオの機能を持つとの 莫大なキャンペーンを行ったにも拘らず、消費者はその気になっていないようだ。サービス開始以来6ヶ月で、 イタリアで30万人、英国で15万5000人が加入しているが、当初の目標だった、年末までに各国で100万と言う 数字には到達しそうも無い。加入者は呼切断だけではなく、重いハンドセットと十分でない電池寿命に文句 を言っている。2Gのハンドセットを予備に持ち歩いている者も多い。
特に英国で事態は深刻で、「3」は料金値下げをせざるを得なかった。6月に導入された新料金は25ポンド(40ドル) で500分通話可能というもので、競争相手事業者の2Gの料金、45ポンドで400分より遥かに低廉なものであった。 今週(9月20日)スエーデンでも格安料金が導入された。問題は3Gがビデオや高速データアクセスにより、厳しい競争 で収益が落ちてきてきた音声通話を補填することができるはずだったのであるが、高価なデータではなく、安価な音声 が3Gの加入者を引きつける唯一の手段だというのはどうしたことだろうか。
ただ言えることは、既成の事業者とは異なり「3」は2Gネットワークを持っていなかったことである。 「3」は自らサービスを開始し、キャンペーンを張り、料金設定をせざるを得なかった。「3」は、来年から W-CDMAを導入しようとする他の競争相手を出し抜いて、技術が真に完成するのを待たず事業を開始することを決めた。 従って別のメーカーで作られた基地局とハンドセットがうまく作動しないなどと言う問題も起こり得た。「 3」は2G事業者に勝つために素晴らしい技術を売り物にしてきたが、差別化商品であるテレビ電話に人気が 無いことが分かった段階で、料金値下げに戻っただけなのである。今は安い音声だけを宣伝している。
これが正しい戦略かどうかは未だ分からない。技術革新により3Gネットワークでは2Gより遥かに安く音声通話 が可能であるから、競争相手より安く設定した「3」の決定には理由があったのである。市場が飽和している中で、 「3」は他事業者からの乗り換えを期待する以外に手は無かったのである。これまでのところ他事業者が追随する と言う恐れは無いようだ。彼らは値下げよりは「3」に若干の加入者を取られることを選ぶであろう。
代わりに彼らは、モバイルデータを他のサービス、すなわちニュースアップデート、ゲーム、静止画(動画ではなく) 送信等のサービスと一体化(バンドル)することを推進している。このサービスは新しいハンドセットで、 2.5GネットワークGPRSにより、カラーで提供することができる。Vodafoneのデータサービス・バンドルは"live!"、 T-Mobileのものは"t-zones"、mmO2 のものは"Active"などと呼ばれている。しかしながら2.5Gネットワークの容量 は限られており、更に多くの新規加入や買い替えが起これば、事業者は密かに、2.5Gと3Gの両ネットワークにアクセス 可能な新しいハンドセットに切り替えていくであろう。しかし、今日の3Gハンドセットは2Gのものに比べて遥かに 大きく、重い。事業者は小型、軽量のハンドセットが2004年に出回ることに期待をかけている。
皮肉なことに全てが計画通りに進めば、消費者は何かが変わったとは思わない。3Gの成功が、それが全く認識されずに 進むことだとすれば、事業者は背景にある技術3Gではなくブランドを強調していくだろう。人々は技術には関心は無い。 3Gは可能性のある技術だがサービスではない。余りにも評判が悪かったので、絶対にこれを3Gとは呼ばないだろうと 言っている人もおり、3GそのものではマーケッティングをしないとVodafoneは言っている。