インテルサットは11月3日、マリサット2号機の運用を10月29日に停止したと発表しました。同機はヒューズ・エアクラフト社により製造され、1976年にコムサット・ジェネラル社が打ち上げたものです。当初の設計寿命は僅か5年でしたが、何と32年の長きにわたり通信サービスを提供し続けてきたのです。
インテルサットによれば、同機を軌道上に維持するための地上システムが寿命に近づいてきたため、他の静止衛星との干渉を避けるべく、最後の燃料を使って125マイル高い、廃棄軌道 (disposal orbit) に持ち上げる操作を行ったとのことです。
同機の最後の仕事は、南極アムンゼン・スコット基地の科学者に対し、インターネット・サービスを提供することでありました。
このニュースを聞いて、ちょっと昔のことを思い出しました。数年前、多摩川電子 (株) に関係していた時、S&Sの前身とも言うべきものを書いていたのですが、当時この会社は携帯電話の IM (インターモジュレーション) 問題で悩んでいたのです。IMとは複数の電波を増幅する際、少しでも回路に接触不良の箇所があると雑音が発生すると言う問題です。そこで私はマリサットの経験について説明したのですが、何とその衛星が、今回話題のマリサット第2号機だったのです。少しそのさわりを紹介しましょう。
そんな衛星が何とその後30年余も働き続け、今、引退と言う、数奇なストーリーです。何でもやってみようという、柔軟な頭の働きが大切だということを気づかせてくれるお話でありました。